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電子帳簿保存法は何が変わったのか?調べてみる

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令和3年度の税制改正で、電子帳簿保存法の改正が行われました。

 

今までは業務効率化や書類等の保管コスト削減、在宅ワークの推進に繋がることが期待されつつも、要件の厳しさ等から中々導入が進んでいなかった印象でした。

しかし今回の改正により、特に導入のハードルとなっていた部分を中心に、要件の見直しがされています。

 

そんな電子帳簿保存法の、今回の改正で特に大きく変わったポイントを中心に調べてみました。

 

 

電子帳簿保存とは?

そもそも電子帳簿保存法とは何なのかという所ですが、国税庁によると以下のように説明されています。

各税法で原則紙での保存が義務づけられ ている帳簿書類について一定の要件を満たし た上で電磁的記録(電子データ)による保 存を可能とすること及び電子的に授受した取 引情報の保存義務等を定めた法律です。

 

(参照:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf

今までは企業に対して取引の事実を証明する等の目的で書類を保存しておく事が求められていたのですが、それを一定条件を満たせばデータでも保存出来るようにしたのが、この電子帳簿保存法です。

 

後述しますが、この「一定条件」というのが、ものによっては要件が厳しく、導入が進まない要因にもなっていました。

 

どんなメリットがあるのか?

電子帳簿保存法を導入する事で、以下のようなメリットが期待されていました。

①業務の効率化

1つ目は紙を無くす事での業務効率化です。

 

書類を整理したり並び替えたり、該当の書類を探したりなど。

これらはいずれも紙がデータに置き換わったとしても必要なものかもしれませんが、データの方が効率的に出来るものかと思います。

 

膨大な書類の山から1枚の書類を探すのとか骨が折れますからね。。。

 

後は異なる拠点でのやり取りなんかでも、紙だと物理的な距離ゆえどうしても時間がかかってしまいますが、データなら送受信も一瞬ですからね。

この辺りが効率化されるというのは大きいのではないでしょうか。

 

②保管コスト、保管スペースの削減

2つ目は保管のコストやスペースの面です。

 

日本では帳簿につけた取引に関する書類を、確定申告期限の翌日から7年間に渡って保管をする事が義務付けられていました。

 

7年分の書類となるとかなり膨大な量なので、その分スペースは必要だし保管コストが嵩む、という問題がありました。

 

在宅ワークの推進

3つめのメリットが、在宅ワークの推進です。

 

在宅ワークが出来ない理由として、「紙でないと出来ない業務があるから、出社せざるを得ない」みたいな事がボトルネックになっているケースは結構あるのではないでしょうか。

他にも在宅にする必要性を感じていないからとか、反対勢力がいるみたいな問題もあるかもしれませんが。

 

データで業務が完結出来るようになれば、後はインフラ環境さえ整えば、極端に言えば世界のどこにいても仕事は出来ますからね(もちろん、業務の特性上在宅でない方がいいものとかはあると思いますが)。

 

もっとも電子帳簿保存法を導入しさえすれば、完全に紙がなくなる訳ではないってところには注意が必要なのかなと。

電子帳簿保存法はあくまで保存の方法を定めた方法であって、書類が不要となる業務フローを構築出来るかどうかは別の話なので。

 

今回の改正の大きなポイント

上の話も踏まえて、今回の改正の主なポイントを見ていければと思います。

大きく「廃止されたもの」と「緩和されたもの」があるので、それぞれご紹介出来ればと思います。

 

廃止されたもの

①適正事務処理要件

廃止されたもの1つ目は適正事務処理要件です。

ここの廃止は結構大きいと思うんですよね。

 

適正事務処理要件というのは、国税庁の資料では次の通りに説明されています。

相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等のことをいいます。
(参照:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf

 

従来の電子帳簿保存法では、特に「定期検査」というのが厄介なポイントになっていました。

 

定期検査というのは原本と電子データを突合して改ざんが行われていないか等をみるためのもので、この定期検査後でないと原本を破棄できない決まりでした。

また、必ず第三者により、年に一回以上行う必要があるルールもあり、これを業務にどう組み込むか、みたいな所はよく論点になっていた印象です。

例えば、

・誰がどのタイミングで実施するのか?

・どこで定期検査を実施するのか?

・コストを踏まえて1拠点に集中させるか?複数拠点にするのか?

・その場所にどれくらいの頻度でどうやって書類を送るか?どう保管するか?

みたいな所が中々決まらず、電子帳簿保存法の導入が遅れるケースがあったのかなと思います。

 

そういった適正事務処理要件が今回の改正により廃止となりました。

定期検査の実施も不要で、スキャン後すぐに書類を廃棄できるようになりました。

 

②税務署長の承認

廃止されたもの2つ目は、税務署長の事前承認です。

 

従来は電子帳簿保存法の導入のために、導入3ヶ月前までに所管税務署へ申請手続きを行い、承認を得る必要がありました。

そのため承認までの期間を見越したスケジュールを策定する必要があったり、手続きのための手間が発生していました。

しかし、今回の改正により、インフラ等の必要要件さえ整っていれば、すぐに電子帳簿保存法を開始できるようになりました。

 

緩和されたもの

①タイムスタンプ

続いては緩和されたもの、1つ目はタイムスタンプ要件です。

タイムスタンプは改竄防止を目的としたもので、電子データに署名をすることで、タイムスタンプの付与後にそれが改竄されていないことを証明するために使われていました。

 

このタイムスタンプもまた導入のハードルを上げる要因になっていました。

というのも求められる要件の厳しさがあったからです。

具体的には領収書受領3日以内にタイムスタンプの付与が必要となるといった事あり、タイトなスケジュール等を踏まえた業務フローを設計する必要がありました。

 

しかし、今回の改正でタイムスタンプの付与期間が最大2ヶ月に延長され、本人の著名も不要になるなどの緩和が行われました。

業務フローの変更が必要な事自体は変わらないものの、考慮すべき要件が緩くなった事で、その難易度は大幅に下がったのかなと思います。

 

②検索機能要件

緩和されたもの2つ目は検索機能要件です。

 

これは必要な情報を電子データ上で閲覧出来るよう、システムの検索機能に一定の要件を定めたものです。

具体的には、取引年月日や金額はもちろん、勘定科目等多岐に渡る項目での検索が出来る事を求められていました。

そのため要件を満たしていない場合はシステム改修や載せ替えの検討をする必要があり、ハードルを上げていた一要因にもなっていました。

 

ただ今回の改正で検索機能として必要な項目が緩和されました。

基本的に、①金額②取引先③取引年月日の3つが担保されていれば、この検索機能要件においては問題なしとなります。

 

そんな感じで、ざっくりと電子帳簿保存法の概要と、税制改正による変更点をお話ししていきました。

もちろん、現行の業務からある程度の変更が必要となる場合がほとんどだとは思いますが、導入のハードルはかなり下がったのではないでしょうか。

 

コロナの状況とかも読めないところがあるので、在宅勤務への移行も見据えて導入を検討しておいた方がいいのは間違いないのではないでしょうか。

 

今は主要な関連システムは大体電子帳簿保存法への対応が済んでいるから少なくとも検討をしているはずなんで、その辺りの所も含めて検討してみてください。

そんな所で。